音楽医科学
研究センター
Musical Skill and Injury Center (MuSIC)
Programs Tailor Made for All Needs
①音楽家の疾患解決を目指した研究
研究内容
音楽家の脳神経疾患や運動器疾患を根治するために,
神経科学,医学,工学,身体運動学の観点から,学際的な研究を行っております.
演奏中や演奏後に現れる,動きの不自由さ(もつれ,こわばり),痛み,震え,痺れなどを対象としています.
得られた成果は,学術論文やセミナー,教育・指導プログラムの開発,臨床応用といった形で,広く社会に還元します.
なお,本研究センターは,直接診断や治療などの医療を提供する機関・団体ではありませんこと,ご留意ください.
研究を通じて有用な手法の開発に成功した際には、教育・医療機関との連携により,積極的な現場還元を目指します.
音楽家の障害について
手指の局所性ジストニア
局所性ジストニアの典型的な症状は,思い通りに手指が動かなくなることです.多くの場合,痛みを伴いません.そのため,問題を軽視したり,「練習が足りないせい」と思って練習量を増やすことにより,症状が悪化する危険性があります.
違和感を感じた場合,神経内科への早期受診が推奨されます.
アンブシュア・ジストニア
管楽器奏者の場合,手指だけではなく,唇の周りや舌の筋肉が過度に緊張し,コントロールができなくなることがあります.このような場合,アンブシュア・ジストニアという局所性ジストニアが疑われます.
主な症状に,ロングトーンを出す場合にピッチが不安定になったり,音を鳴らし始める瞬間にうまく音を鳴らせなくなることが挙げられます.
疼痛(急性,慢性)
過度の練習により,末梢の筋肉や腱が炎症を起こしたり,末梢神経が損傷したりすることで,痛みが起こります.適切な処置を取らず,痛みが長期化すると,末梢部位の問題が解決後も,痛みが持続する脳神経疾患に発展することがあります(慢性疼痛炎).クララ・シューマンやアレクサンダー・スクリャービンが苦しんだ疾患として知られています.
研究手法の例
非侵襲脳電気刺激(tDCS)による
神経リハビリテーション
動作および筋活動計測・評価
生体を傷付けない経頭蓋磁気刺激を
用いた脳機能評価
②音楽家の技能熟達のための研究
研究内容
高速度カメラや各種生体センターを用いて,演奏における様々な身体運動技能を計測・解析し,
スキルの本質と,その背後にある脳神経メカニズムを正しく理解します.
さらに,スキルを向上するための練習法や,舞台上で思い通りのパフォーマンスを発揮するために必要な術など
音楽家の熟達支援を実現する研究を行います.
高速度・高精度に手指を動かすための練習法
どうすれば,5本の指を独立に,素早く,正確に操ることができるのでしょうか?
例えば,「ゆっくり練習しなさい」と現場ではよく耳にしますが,実際にゆっくり練習するだけで,練習した課題だけではなく,練習していない課題も,素早く弾けるようになります.
このように,データに基づく事実を集積し,「最適な練習法」を開発することを目指します.
超絶技巧のヒミツを解き明かす
複雑で,高速度かつ精密な演奏を行う音楽家.
その神秘のヴェールを解き明かすため,
生体計測とデータサイエンスを駆使した研究を行います.
遺伝子の効果や練習の恩恵,トレーニングの必要性や,特殊な奏法の役割について
実験を通して一つ一つ丁寧に検証していきます.
研究手法の例
超小型ワイアレス筋電計による
手指の筋活動の計測
位置・力センサー実装ピアノによる
タッチのデータ解析
ロボット工学を応用した
音楽家の身体の力学モデル解析
当研究センターは,以下の研究活動支援を受け,活動を行っております.